デイトレーダー型と決め付けて思考停止してる場合ではない

Yahoo!ニュース - 07年度の社員は「デイトレーダー型」 社会経済生産性本部が命名
発表元の財団法人社会経済生産性本部
流行語を新入社員に無理矢理当てはめ、あたかも新入社員(最近の若者)の大半がその性質を持っているかのように印象付ける。やってる方は面白半分なのでしょうが、そういうのに少し違和感を感じてしまうのは僕だけですか?やるならしっかりやって下さいと思うんです。裏付けになるデータも一緒に出すとか。僕のような個人ブロガーじゃないんですから感覚でものをいうにしても影響力を考えて欲しいです。(床暖房型とか栄養補助食品型とか毎年キャッチーな命名をしていらっしゃるようですが。)

平成19年度・新入社員のタイプは「デイトレーダー型」*1
景気の回復で久々の大量採用だったが、氷河期前とは異なり、細かい損得勘定で銘柄(会社)の物色を継続し、安定株主になりにくい。売り手市場だっただけに、早期転職が予想される。ネットを駆使した横のつながりで情報交換が活発だが、情報に踊らされない慎重さも必要。

(解説) 景気の回復を背景に今年は大量の新入社員が誕生した。平成不況以前のような華々しい入社式を挙行した企業も多いだろう。しかし、これを期に平成不況以前のような「企業戦士」型の人材を育てようと虎視眈々と待ち構えていると、その期待は裏切られる就職氷河期後の新入社員は、就職した会社とともに育っていこうとは考えず、常に、よい待遇、よい仕事を求めて「銘柄の乗り換え」つまり「転職」を目論む傾向がある。その意識は昨今のネット上の個人投資家に近い。ネットを通じた横のつながりで情報交換をするのもいいが、一人前の働き手になるにはそれなりの時間がかかることも新入社員たちには忘れないでほしい。自分さがしも大事だが、まずは目の前の仕事にじっくり取り組むことを期待したい。*2

細かい損得勘定で銘柄(会社)の物色を継続し、安定株主になりにくい

安定株主になりにくいなら、なるように働きかければ良いじゃないですか。新入社員は株主と違って毎日出社してくるんです。その接点活かしましょうよ。

「企業戦士」型の人材を育てようと虎視眈々と待ち構えていると、その期待は裏切られる

そりゃ、虎視眈々と待ち構えてたってダメでしょう。僕らは待ち合わせをしているんではないんですから。何かアクション起こしたいのなら、積極的に柔軟にどんどんアプローチかけていきましょうよ。

良い待遇、よい仕事を求める

これ自体は悪いことでも何でもありません。問題はこの期待に企業側が応えられるかでしょう。もちろん、身の丈に合わない過剰な期待をする勘違い新入社員は除いてですが。だいたい、このことはどの世代でも一緒ですよ。労働組合は何なんですか?良い待遇、よい仕事を求めてるんじゃないですか?

で、この命名どなたがやってらっしゃるの?

学識経験者などで構成される当研究会では、多くの企業・学校等の就職・採用関係者の協力を得て、本年4月の新卒入社者の特徴を検討し、タイプの命名を行った

当事者である学生の意見は直接聞かずにやってるんですかね?そうですか。そうですか。
しかも、新卒入社前なのに特徴が十分にわかるんでしょうか?毎年変わる新入社員の本質が掴めるんでしょうか?まあ、掴めるんでしょうね。学識経験者はすごいですもんね。学識経験者は。

新入社員の転職についての考え方を変えませんか?

新入社員は転職する?――「しないつもり」の学生を「する」と見る採用担当者
上の記事で示されているデータを見ると2007年度の新入社員で既に転職を意識している方が4割強いるようです。このようなデータが人事の方の転職や独立への過剰な警戒を誘発することになるのでしょうか。

しかし、このデータの「転職を意識」の「本気度」は一体どの程度でしょうか?ここは結構重要だと思います。それに、思考と行動の差は非常に大きいもので、「転職を意識している」と「転職をする」は全く違います。そもそも、入社前から転職を意識しているっていうのはほとんど向上心からではありませんか?ミスマッチや仕事が嫌になった、などのマイナス要因からではほとんどないはずです。「新卒入社の3年で3割が辞める」の3割と、この4割強は結構違う属性かもしれません。少なくとも学生側の僕の視点からは、このデータには非常に違和感があります。周りをみても入社前から転職なんて本気で意識している者はそんなに多くはありません。問題は入社後にあるのは明らかです。

「3年で3割辞める」だけど、優秀な人事の方はもっと建設的な考えを

人事という大役を任されるような優秀な方には是非そのようなことの心配を過剰にしないでいただきたいです。確かに3年で3割も転職されたんでは採用費や教育費を他社ににあげるようなものですが、「辞める奴はいらん」で思考停止になるのではなく、もっと建設的に考えませんか。

「3年で3割が辞める」だから「辞めそうな奴はとらない」では能がなさ過ぎではありませんか?辞めそうな奴にも単にやる気がない奴、常にステップアップを考えている向上心のある奴など色々です。そのそれぞれに入社後どのような職場環境・仕事を与え、どんな柔軟で魅力的な人事制度を作れば彼・彼女らと会社にとってWin-Winの関係が築けるのか、という点をもう少し考えてみるともっと素晴らしい会社作りができそうな気がします。

「今の辞めそう」がそのまま「将来の辞める」ではない

「今の辞めそう」がそのまま「将来の辞める」ではありません。「今は辞めそうに思えるけど、それでも会社に大いに貢献してくれそうだ。そして会社をもっと魅力的にできれば、ずっとこの会社で働きたいという気持ちに変えることができるだろう。よし、是非採用しよう!そして魅力的な会社作りを頑張ろう!」こういう考えは人事の方にはリスクが高すぎて無理なのでしょうか?たとえ、転職を意識しているような人材でも、いざ「転職しよう」という時には天秤にかけるんです。今の会社で頑張るべきか、転職するべきか。そこで勝てばいいんです。単純です。人事がこのくらいの緊張感を常に持てればその会社はきっと素晴らしい会社になるはずです。もう新入社員に転職の警戒をする必要もなくなるほど素晴らしい会社に。

*1:だいたいデイトレーダーは株価チャートや騰落率ランキング等をもとに経験とセンスの超短期投機でお金を稼ぎ出す驚くべき種族ですよ。売買期間が基本は一日で完結。多くても数日。極め付けに、デイトレーダーのほとんどは雑誌で取り上げられるような天才やラッキーマンではないので、大損こいて市場から即刻追い出されるのが現実なんですよ。長期投資や週単位で売買するスイングトレードとは全く違います。いやはや、このデイトレーダー型社員というのは新入社員への皮肉も入ってるんですかね?もう、ひどいなぁ。笑

*2:これには僕も同意です。